入交いりかわ)” の例文
何某なにがし。)とかのペンを持った一人が声を懸けると寝台の上に仰向あおむけになっていたのは、すべり落ちるように下りて蹌踉よろよろと外科室へ入交いりかわる。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と小突いて、入交いりかわって、むかいの生垣に押つけたが、蒼ざめたやっこの顔が、かッと燃えて見えたのは、咽喉のんどを絞められたものである。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されば一べいの菓子、一さん珈琲コオヒイに、一円、二円となげうちて、なおも冥加に余るとなし、我も我もと、入交いりかわり、立替る、随喜のともがら数うるにうべからず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて入交いりかわって女中が一人いちにん、今夜の忙しさに親類の娘が臨時手伝という、娘柄こがらい、つまはずれの尋常なのが
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この方、あの年増めを見送って、入交いりかわって来るは若いのか、と前髪の正面でも見ようと思えば、霜げた冬瓜とうがん草鞋わらじ打着ぶちつけた、という異体なつらを、ふすまの影からはすに出して
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)