価直かち)” の例文
人は理想あるが故にたふとかるべし、もし実在の仮偽なる境遇に満足し了る事を得るものならば、吾人は人間の霊なる価直かちを知るに苦しむなり。
一種の攘夷思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ユーモリストに到りてはおのづから其趣を異にすれども、之とても亦た隠約の間に情熱を有するにあらざれば、戯言戯語の価直かちを越ゆること能はざるべし。
情熱 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
純潔チヤスチチイより恋愛に進む時に至道にかなへる順序あり、しかれども始めより純潔なきの恋愛は、飄漾へうやうとして浪に浮かるゝ肉愛なり、何の価直かちなく、何の美観なし。
余は此書の価直かちを論ずるよりも寧ろ此著の精神をうかゞふを主とするなり。即ち紅葉が粋と侠とを集めて一美人を作り、其一代記をものしたる中に、如何なる美があるを探らんとするなり。
恋愛なるもの甚だ価直かちなく、女性のレデイシップをゼントルマンシップの裡面に涵養するかはりに、かへつて女性をして男性の為すところを学ばしめて、一種の女侠なるものを重んずるに至れり
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)