何事なに)” の例文
何事なに? ……うしたの? ……何うしたの?」と、気にして聞く。私は、失敗しくじった! と、穴にも入りたい心地をつとめて隠して
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
家を中心にして一生の計画はかりごとを立てようという人と、先ずうちの外に出てそれから何事なにようという人と、この二人の友達はやがて公園内の茶店さてんへ入った。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いづ何事なにかやり出すだらう! それは、その一箇年の間の、四周あたりの人の渠に対する思惑であつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
千々岩は懲りずまにあちこちらす浪子の目を追いつつ「浪子さん、一言ひとこといって置くが、秘密、何事なにも秘密に、な、武男君にも、御両親にも。で、なけりゃ——後悔しますぞ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その御婆さんのとこから今朝けさ貴女あなた、信太郎が大病でむづかしいと云ふてよこしたので御座います……まー其時の私の心は……………それで貴女、うちに居た処で何事なにも手に付きはしませず
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
何事なにに就けても嫉妬心が強くって、直ぐまたそれを表に出す人間だが其様なにもお宮のことが焼けたかなあ、と思いながら、私は長田の嫉妬心の強いのを今更に恐れていた。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
節子はこの家の内に起って来る何事なにかの前兆ででもあるかのように、それを言った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こうして十年も旅舎に寝転ねころんで、何事なにてるんだか解らない人だと世間から思われても、別に俺は世間の人に迷惑を掛けた覚は無し、兄貴のところなぞからびた一文でも貰って出たものでは無いが
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)