伯仲はくちゅう)” の例文
先生の服装は中野君の説明したごとく、自分と伯仲はくちゅうの間にある。先生の書斎は座敷をかねる点において自分のへやと同様である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「その丹下左膳が、おれより上の腕とは、まだきまらぬテ。まず伯仲はくちゅうであろうとは思うが、いずれその決着も、つく折りがあろう、ウフフフフ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
走っていると云うよりはねていると云うのかも知れない。ちょうど昔ガリラヤのみずうみにあらしを迎えたクリストの船にも伯仲はくちゅうするかと思うくらいである。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すなわち諸君の頭脳は、吾輩の二十年分の研究と相伯仲はくちゅうする……否……正木キチガイ博士の頭のスピード以上の明快なるスピードを以て……イヤ……有難う。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
丹羽、佐久間は秀吉の先輩であり、明智、滝川なども、その人望才識、共に、秀吉と伯仲はくちゅうしている。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうかといって、眼は熊に向いつつも、心はよそに、二大政党の勢力が伯仲はくちゅうかんにあって、将来の政局がどう安定するか、というようなことをも考えている男ではありません。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小野派一刀流の浅利又七郎や、北辰一刀流の千葉周作等、前後して輩出した名人達と、伯仲はくちゅうの間にあったという、そういう達人の秋山要介正勝あきやまようすけまさかつ! 武士は実にその人なのであった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
親しみやすくないのか、日本のファン達には、毛嫌いする向もあるようだが、そのレコードの数はベートーヴェン、シューベルト、モーツァルトに次いでおびただしく、おそらくバッハと伯仲はくちゅう
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
一同が、眼をそばだてて熟視するなかにしばらくは双方、伯仲はくちゅうの力をあつめてち合いの形と見えたが——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
数馬と多門とは同門のうちでも、ちょうど腕前の伯仲はくちゅうした相弟子あいでしだったのでございまする。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「要するに僕と伯仲はくちゅうの間か」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)