乾割ひわ)” の例文
「もう、三十にちあめらない。まだこのうえ、ひでりがつづいたら、や、はたけ乾割ひわれてしまうだろう。」といって、一人ひとりは、歎息たんそくをしますと
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
隙間だらけで、乾割ひわれた雨戸が閉ったままだし、夕餉ゆうげどきだというのにかしぎの煙も見えず、人の声もしなかった。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それから三四日たったのち、二万噸の××は両舷の水圧を失っていたためにだんだん甲板かんぱん乾割ひわれはじめた。この容子ようすを見た職工たちはいよいよ修繕工事を急ぎ出した。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
紙魚しみくいだらけの古帳面を、部屋いっぱいにとりちらしたなかで、乾割ひわれた、蠅のくそだらけの床柱に凭れ、ふところから手の先だけを出し、馬鹿長い顎の先をつまみながら
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)