乾上ひあが)” の例文
またタクラマカンの死の荒野の東、ロプ海床かいしょうを越え、乾上ひあがった海底に残る竜宮城の廃墟のまぼろしをのあたりに見ながら、玄奘は印度からの帰途を急いだことであろう。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
勿論これだけの自覚があったにしても、一家眷属けんぞくの口が乾上ひあがる惧がある以上、予は怪しげな語学の資本を運転させて、どこまでも教育家らしい店構みせがまえを張りつづける覚悟でいた。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
池がこの旱魃かんばつ乾上ひあがって沼みたいになりかかっているところがあるんです。その沼へ踏みこもうという土のやわらかいところに、格闘かくとうあとらしいものがあるんです。靴跡がみだれています。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と云うのは、その傷口が乾上ひあがってから始めてお目通りを許されてみると、殿様の顔が生れもつかぬ兎唇みつくちになっていたのである。いかさま、此の程度の負傷なら深手とは云えないかも知れない。
ところが本格の探偵小説は決して乾上ひあがりなんかする気色はない。
探偵小説の正体 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
はま眞砂まさご乾上ひあがときは、たのしさうにも雲雀ひばりのやうに
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
田圃がみんな乾上ひあがって
雨ふり坊主 (新字新仮名) / 夢野久作香倶土三鳥(著)