乗掛のりかか)” の例文
旧字:乘掛
はッと驚くと同時に、彼は幸いに這っていたので、矢庭やにわに敵の片足を取って引いて、倒れる所を乗掛のりかかっての胸の上に片膝突いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
トはっと気を返して、恍惚うっとり目をく。夢が覚めたように、起上って、取乱したなりもそのまま、おんな同士、お綾の膝に乗掛のりかかって、くびに手をからみながら、切ない息の下で
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ずり落ちた帯の結目むすびめを、みしと踏んで、片膝を胴腹へむずと乗掛のりかかって、忘八くつわの紳士が、外套も脱がず、革帯を陰気に重く光らしたのが、鉄の火箸ひばしで、ため打ちにピシャリ打ちピシリと当てる。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……御覧の通り人間の中の変なきのこのような、こんな野郎にも、不思議なまわり合せで、そのおんなたちのあとをけてかなけりゃならねえ一役ついていたのでございましてね。……乗掛のりかかった船だ。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)