不申まをさず)” の例文
私は何故なにゆゑ富山に縁付き申候や、其気そのきには相成申候や、又何故御前様の御辞おんことばには従ひ不申まをさず候や、唯今ただいまと相成候て考へ申候へば、覚めてくやしき夢の中のやうにて、全く一時の迷とも可申まをすべく
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おほせの如く近來和歌は一向に振ひ不申まをさず候。正直に申し候へば萬葉以來實朝以來一向に振ひ不申候。實朝といふ人は三十にも足らでいざ是からといふ處にてあへなき最期を遂げられ誠に殘念致し候。
歌よみに与ふる書 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
身を乞食にやつして故郷に帰る小生の苦衷御察し被下度くだされたく、御恩は永久に忘れ不申まをさず候。昨日御別れ致候後、途中腹痛にて困難を極め、午後十一時やうやく当市に無事安着仕候。乍他事たじながら御安意被下度くだされたく候。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昼のうち頭重つむりおもく、胸閉ぢ、気疲劇きづかれはげしく、何を致候も大儀たいぎにて、けて人に会ひ候がうるさく、たれにも一切いつせつくち不申まをさず唯独ただひと引籠ひきこもり居り候て、むなしく時の候中さふらふうちに、此命このいのちの絶えずちとづつ弱り候て
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)