一降ひとふ)” の例文
短夜みじかよの明けぎわにざっと一降ひとふり降って来た雨の音を夢うつつのうちに聞きながら、君江は暫くうとうとしたかと思うと、たちまち窓の下の横町よこちょうから
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
河はもうこの一降ひとふりで水量みずかさを増していた。濁流が瀬の石に白い泡を噛んでいる。五条まで下がれば橋はあるが、範宴は浅瀬を見まわしてそこを渡渉こえて行こうとする。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
贅沢を云っては悪いが、この暖さと、長閑のどかさの真中には一降ひとふり来たらばと思った。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)