僕はこの頃漫然と兪樾ゆゑつの「右台仙館筆記うたいせんくわんひつき」を読んでゐるうちにかう云ふ俗伝は支那人の中にもあつたと云ふことを発見した。それは同書の中に掲げた「賈慎庵かしんあん」の話に出合つたからである。
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)