梅雨つゆ
去年の梅雨には曇天が毎日續いた。重苦しい濕氣のなかで私は毎日ねつとりとした汗をかき、苦しんだ。思へば毎年その頃になつて筆の動いた試しがないが、この年の梅雨の日は或る日どこからか逃げてきたらしい鶯が庭の繁みのなかで鳴きはじめた。梢をのぞいても …