記憶ちがいきおくちがい
「久しぶりだな、全く。」 「久しぶりどころじゃないね、五十年ぶりだもの。」 こう云って、声を揃えて笑ったのは、何れも老人で、二人とも今年は算え歳の六十三である。この“久しぶり”という間投詞のような挨拶は、今しがた、二人が会ってから、もう二、 …