ふつと、軽い夢が消えると、窓先を白い花が散つてゐた。何かにギクリと悸された鼓動の余韻が、同じやうに静かに、心から散つて行くのを、私は感じた。 「桜の花だつたか。」、私はさう思つた。 ガジガジと、インク壺の中へペン先を突き込む音がする、慌しく …
著者 | 牧野信一 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
初出 | 「新小説 第二十七巻第十一号(十月号)」春陽堂、1922(大正11)年10月1日 |
文字種別 | 新字旧仮名 |
読書目安時間 | 約60分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約1時間39分(300文字/分) |