山の見える窓にてやまのみえるまどにて
私はこの町(芝区三田——)で、はじめての春を迎へた。おとゝしの春——さうだ、はつきりと四日であつたことを覚えてゐる、河堤の桜の蕾が漸くふくらみはじめて、もう花見の日も二三日に迫つたことであるから、もうひといき出発を見合せないか、と、その時ま …