「椿」序「つばき」じょ
最近五六年間に書いた小品を集めて『椿』といふのは、別に意味のあることではない。丁度それを輯めようとする頃、椿の花が殊に私の眼に附いたからである。私は丁度其時友人のフランスに立つのを送つて、箱根まで行つた。国府津、酒勾、鎌倉の海岸には、葉の緑 …