誠心院の一夜せいしんいんのいちや
赤染衞門は先程から不思議なものを見た、と云ふ氣がしてならなかつた。併し其れは決して惡い氣持のものではない。いやむしろ先程から清げに、圓滿に落着くべき處に落着いた惱みの道を全く通り拔けて、女として、人間として、最も落着いた境地に入り得た者の、 …