泡鳴氏の『耽溺』ほうめいしの『たんでき』
いかなる事象をも——口に言ふに忍びざるほどの悲慘、殘忍、冷酷のことをも、明かに其心に映し得るやうに、作者は常に眞率な無邪氣な心を持つて居なければならぬ。『耽溺』の事象を、泡鳴君があのやうに明かに自己の心に映し得たのは、まことに敬服に値ひする …