災厄の日さいやくのひ
自分の部屋でもないその部屋を自分の部屋のやうに、古びた襖や朽ちかかつた柱や雨漏のあとをとどめた壁を、自分の心の内部か何かのやうに安らかな気持で僕は眺めてゐる。湿気と樹木の多い日蔭の露路にこの下宿屋の玄関はあつて、暗い階段をのぼつた突当りの六 …