きれぎれの追憶きれぎれのついおく
辻野久憲君が亡くなつたのは一九三七年の九月九日である。早いものだ、それからもう十二年になる。 忘れえぬ友といへば、僕の生涯にもはやかなりの数にのぼる。なかでも年少の友の死は一しほ痛々しい。けれどその死者の記憶が、いつまでも鮮らしい傷口を開い …