大阪の一夜おおさかのいちや
十日ほども降り続いた梅雨があけると、おそろしくむし暑い日が続いて、街は、腐敗したどぶ川の悪臭が染み込んでぶくぶくと泡立つてゐるやうに感ぜられた。赤茶けた媒煙に煙つた陰鬱な低い空の下に並んでゐる家々は、なんとなく古ぼけて傾きかかつてゐるやうで …