群棲ぐんせい)” の例文
子は一ぴきしか生まないという群棲ぐんせい動物を見ていると、非常に我々人間にあてつけるようであり、自分達の家庭生活をいやでも思い出さざるを得ない。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
私はいつか映画でオットセイの群棲ぐんせいを見たことがある。ひれのような手足でバタバタはねる恰好かっこうや、病牛の遠吠とおぼえのような声を思い出すうちに本当に嘔吐おうとをもよおして来た。
黒猫 (新字新仮名) / 島木健作(著)
人込みの中に紛れ込んで、お互いに邪魔にもならず邪魔にもされずに、共にある一定の時間を過ごすことは、人間という群棲ぐんせい動物にとっては、やはり心やりの一つなのであろう。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
ほら、この湖には、白鳥や、がんや、かもが棲んでいましたし、土地の古老の話によると、あらゆる種類の鳥が無慮無数に群棲ぐんせいしていて、まるで雲のように空を飛んでいたそうです。
海ひょう狩りの目的は、サクラ湾に群棲ぐんせいする海ひょうをとって、その油をとることにあった。じっさい洞窟内どうくつないのもっともなやみとするところは、夜間の燈火が不十分なことである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
タミル人は、この錫蘭セイロン島の奥地からマドラスの北部へかけて、彼らの熱愛する古式な長袖着キャフタンと、真鍮しんちゅう製の水甕みずがめと、金いろの腕輪とを大事にして、まるで瘤牛ジイプのように山野に群棲ぐんせいしていた。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
孤島とを棲処すみかとして、群棲ぐんせいを常とする信天翁あほうどりが今時分ひとりで、こんなところをうろついているというのも変ですから、或いはオホツク海あたりから来た大鷲おおわしが、浦賀海峡を股にかけて
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)