鼠鳴ねずみな)” の例文
それより気の毒なのは、三人の女だ、空涙そらなみだ一つこぼすどころか、横着者のお村などは、病気でブラブラしていたくせに、主人が死ぬと鼠鳴ねずみなきを
沙金しゃきんは、おれのく時刻を見はからって、あの半蔀はじとみの間から、雀色時すずめいろどきの往来をのぞいている。そうしておれの姿が見えると、鼠鳴ねずみなきをして、はいれと言う。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
とまの下から鼠鳴ねずみなきをするお角のことばだのが、幾度となく繰返されるうちには、このとま舟の世帯が、何をいとなむものだかという事をさとらぬわけはありません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
犬ころのように、首と首とをからみ合ってよろけて来る。そして、細目に開けた大戸の隙から手招きしている鼠鳴ねずみなきに呼び込まれ、そのままふらふらと登楼あがってしまった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
橋の下から、石垣の蔭から、時々なまめかしい鼠鳴ねずみなきが聞える。白い、手が招く。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)