高土間たかどま)” の例文
この雛段を、下から、新高しんだか高土間たかどま桟敷さじきととなえ、二階にあるのは二階桟敷さじき、正面桟敷といった。そこにも緋のもうせんがかかっている。
私はやっと最初の目礼が私に送られたのではなかったと云う事に気がつきましたから、思わず周囲の高土間たかどまを見まわして、その挨拶の相手を物色しました。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
桟敷一間ひとま四円四十銭、高土間たかどま三円三十銭、ひら土間二円四十銭、但しいずれも一間五人詰の価であるから、一人分はその五分の一であることを忘れてはならない。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「まあ、御覧なさいませ、初日から、五日目まで、高土間たかどま、桟敷ももうみんな、売切れになりました」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「可かんな。那處あすこから此の室を見下されちや、恰で高土間たかどま芝居見物しばゐけんぶつといふ格だ。」と嫌な顏をする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
設けの席というのは必ず高土間たかどまに限られていた。これは彼らの服装なりなり顔なり、髪飾なりが、一般の眼によく着く便利のいい場所なので、派出を好む人達が、争って手に入れたがるからであった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてきずあとは綺麗きれいにぬぐったようになおった彼女は、寛治氏と同道にて歌舞伎座の東の高土間たかどまに、臆面もなく芝居見物に来ていたという事を報じた。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その入場料は、桟敷一間さじきひとまに付き四円七十銭、高土間たかどま三円五十銭、ひら土間二円八十銭であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
柳盛座は浅草の向う柳原にある小劇場——といっても、いわゆる鈍帳どんちょう芝居の部で、桟敷さじき高土間たかどまがないでもないが、ひら土間の大部分は大入り場で、その木戸銭はただの二銭であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)