頤紐あごひも)” の例文
頤紐あごひも金釦きんボタン給仕ボーイを通じさせるとはたして私の予感どおり、「唯今大使館のお客が見えているものですから、しばらくお待ちを願います」
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
部下を四方へ散らばせると、巡査部長は帽子の頤紐あごひもをゆるめて、頤に掛けた。そして鼻をクンクン鳴らして
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この巨大な体躯の持ち主は、頤紐あごひもをかけた面にマスクもつけず、彼の大きな団子鼻は寒気のためにいちごのように赤かった。なににしても、たいへんな頑張り方だった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ビューッ! と烈風が鳴りはためいて、頤紐あごひもを掛けた大尉の顔が、帽子の中で蒼白く微笑んだと思った途端、自分も大尉も、その場にぎ倒されて、夢中で欄干てすりにしがみついた。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
帆村探偵は車を下りて、頤紐あごひもをかけた警官に、住吉署の正木署長が来ていないかと尋ねた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帆村探偵の命令で、なお全速力で、現場に近づくにしたがって、爆発のため破壊された家やへい惨状さんじょうが、三人の目をおどろかせた。現場ちかくで頤紐あごひもかけた警官隊に停車を命ぜられた。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
頤紐あごひものかかったおもてをあげて、丁度ちょうどその時刻、帝都防護飛行隊が巡邏じゅんらしている筈の品川上空を注視したが、その方向には、いたずらに霧とも煙ともわからないものが濃くめていて
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)