雄弁ゆうべん)” の例文
旧字:雄辯
青山敬太郎は大河ほど雄弁ゆうべんな口はきかなかった。かれはむしろ沈黙ちんもくがちであり、ごくまれに断片的だんぺんてきな意見を発表するにすぎなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
これがフランスじんの会合であったならば、雄弁ゆうべん能弁のうべんジェスチュアその他ドラマチックの動作どうさがさだめしみごとなものであったろうと想像さる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だが卜斎の返答へんとう雄弁ゆうべんだけで、ところどころうまくごましているのをつらにくくおもった村上賛之丞むらかみさんのじょうは、ややげきして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人にとっては、それがまた何より面白いので、話がおのずから雄弁ゆうべんになり、子供に聞かすようにしてなだめ話した。
益々ますます雄弁ゆうべんに「ほんとにいやらし。山田さんや高橋さんみたいに、仰山ぎょうさん白粉おしろいや紅をべたべたるひといるからやわ」
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
彦太郎はその通りであると思い、久太郎は吃音どもりであった筈だがとひょっくり考えたり、滔々と淀みない雄弁ゆうべんをつづける久太郎の口元を不思議そうに見つめた。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
僕は、秘密のうちに、後方のカビ博士からの指示をうけながら、雄弁ゆうべんに述べたてた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうした血統上の痕跡こんせきは、何よりも雄弁ゆうべんにツルゲーネフの生活(彼は一生涯いっしょうがい独身で押し通しました)が物語っているのですが、文芸作品の面から言うと、ここに訳出した短編『はつ恋』に
「はつ恋」解説 (新字新仮名) / 神西清(著)
和田はこう前置きをしてから、いつにない雄弁ゆうべんを振い出した。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
塾生たちは、しかし、研究会でのかれの雄弁ゆうべん圧倒あっとうされて以来、議論がめんどうになって来ると、とかくかれの意見を求めたがった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
この席に来た人々は日本に関する知識を求めに来たので、決して雄弁ゆうべん能弁のうべんを聴くつもりで来たのでない。日本人が英語をあやつるのであれば、さだめしブロークンな英語であろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
すべては「白鳥霊社しらとりれいしゃ」の額板が、雄弁ゆうべん解決かいけつをつけていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『盗まれた脳髄』は「雄弁ゆうべん」にったもの。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのあと、話は、そのころの思い出で、つぎからつぎに花がいた。共通の話題は、いつまでたってもつきなかった。次郎をのぞいては、だれもが雄弁ゆうべんだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)