隆々りゅうりゅう)” の例文
かれは信長の命によって、勝家の北陸探題たんだい輔佐ほさして、共に越中に在任していたのであるが、勝家の滅亡と、秀吉の隆々りゅうりゅうたる勢いを見ては
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕は夜のうちに、あの隆々りゅうりゅうたる鼻と、キリリと引締っていた唇と(自分のものをめることをわらわないで呉れ、これが本当に褒めおさめなのだから)
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれの身のたけは五尺四寸、腕は鉄のごとく黒く、隆々りゅうりゅうとした肉が肩に隆起し、胸は春の野のごとく広く伸びやかである。かれの母はいつもかれを見やって微笑した。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
その鉄片をたたきつけたような隆々りゅうりゅうたる筋肉、名工の刻んだ神将の姿をそのまま。その引締った肉体を見たものは、面貌の醜と、身長の短とを、忘れてしまいました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
狂歌の先生には必要のない、隆々りゅうりゅうたる肉のこぶ、しかも鍛えのあとが見えている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もちろん、一般に対しては、戦うごとに強大をなしてゆく、自国の隆々りゅうりゅうたる実体を、誇示してゆく気もちもある。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに妾自身の気力が衰える頃になって、隆々りゅうりゅうたる夫を持っていることが、どんなにか健康のためにいい薬になるかしれないのだ。妾はそこに気がついた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
うまたくらんで、あの先生をこっちのものにしてしまう、細工は隆々りゅうりゅう、今日という今日は、きれいに生捕いけどってしまって、さいぜん駕籠にお乗りなすったままそっくりお連れ申して
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
金鋲きんぴょうかご銀鞍ぎんあんの馬、躑躅つつじさきたちに出入りする者、ほこりはかれらの上にのみある。隆々りゅうりゅうと東海から八方へ覇翼はよくをのばす徳川家とくがわけの一もん、そのいきおいのすばらしさったらない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、由蔵は、己が隆々りゅうりゅうたる腕力に自信を置いて、樫田武平の華奢きゃしゃ頸筋くびすじを締めつけようと襲いかかった。と、早くも吹矢は由蔵の咽喉笛深くグザと突刺さったのであった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
甲州城の勤番支配として、隆々りゅうりゅうたる威勢で乗り込んだ駒井能登守その人を、こんな方角ちがいの辺鄙へんぴなところで、こうしてお目にかかろうということは、夢に夢見るようなものです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつのまにか隆々りゅうりゅうたる勢力と人望が集められたのは、何といっても、近年のことで、その要因は、官兵衛という総領そうりょう息子が、親まさりだったからといってさしつかえないようである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)