陥落かんらく)” の例文
旧字:陷落
高遠陥落かんらくと聞いたときなど、こういうつぶやきすら洩らした程である。防戦上の誤算というよりは、人間としての未熟さを忌憚きたんなく出している。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学校は、祝賀のために、校長先生が奉天が陥落かんらくして、日本軍が大勝利であったことを話したきりで、その日は休みであった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
旅順が陥落かんらくしたという評判が盛んであった。まだそんなに早く取れるはずがないという人々もあった。街道を鈴を鳴らして走って行く号外売ごうがいうりもあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「あははは、ピートが、とうとう陥落かんらくしたぞ。この部屋をのろわない者は、一人もなくなったよ、あははは」
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
寺尾は逢ふたんびに、もつと書け書けと勧める。さうして、おれを見ろと云ふのが口癖くちくせであつた。けれどもほかひとくと、寺尾ももう陥落かんらくするだらうと云ふ評判であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのとしの二月には露国に対し宣戦の詔勅しょうちょくが降り、私の仙台に来たころには遼陽りょうようもろく陥落かんらくし、ついで旅順りょじゅん総攻撃が開始せられ、気早な人たちはもう、旅順陥落ちかしと叫び
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「そうれ始まった。恭一君、めったに陥落かんらくしちゃいかんぞ。」
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と、ながめていたが、すぐ前隊との伝令で、岩崎城の陥落かんらくがわかり、笑いどよめいて、馬にも草を飼ったりしていた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅順陥落かんらくかけに負けたからとて、校長は鶏卵たまごを十五個くれたが、それは実は病気見舞いのつもりであったらしい。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
氏は英仏連合軍の中に在りて、自ら偵察機ていさつきを操縦して参戦中なりしが、ダンケルクの陥落かんらく二日前、フランス軍の負傷者等を搭載とうさいしパリに向け離陸後消息しょうそくを絶ちしものなり。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けだし、天王寺の陥落かんらくは、淀川の線に沿って、すぐ京都をおびやかしうる体勢を敵が持ったことを意味するからだ。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「敵も旅順は頑強がんきょうにやるつもりらしいですな。どうも海軍だけではだめのようですな」などと校長が言った。旅順の陥落かんらくについての日が同僚の間に予想される。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
早く陥落かんらくさせて、太平洋に出なけりゃならんのじゃ、何しろ、連日のように最悪の気象に阻止そしせられて、頼みに思う空軍は全く役に立たず、そうかと云って、無理に進むと、それ
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
秀吉は即日、一書を封じて、早馬にたくした。三木城陥落かんらくを、信長の許へ急報したものであることは言をたない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徐州、小沛は、はや陥落かんらくす。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)