金玉きんぎょく)” の例文
お触れのかきつけを読むことも、嫁の里へやる手紙を書くこともできないのが多いのですから、文字を有難がることは金玉きんぎょくのようです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まず我が一身を独立せしめ、我が一身を重んじて、自からその身を金玉きんぎょくし、もって他の関係を維持して人事の秩序を保つべし。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かくの如くして毎月数千の句を発表するのであるが、ことごとくそれらの句は金玉きんぎょくの名句であるということは出来ない。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そうじてうちつゝむはほかほまれ、金玉きんぎょく物語ものがたりきん鈎子はさみがねかすれば、にも立派りっぱ寶物たからもの
以下一連の歌はことごと金玉きんぎょくである。平淡な叙述の内に一道の寂しい情調がみなぎって居る。
歌の潤い (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
地をぼくして、王城をもしのぐ大築城を営み、百門の内には金玉きんぎょくの殿舎楼台を建てつらね、ここに二十年の兵糧を貯え、十五から二十歳ぐらいまでの美女八百余人を選んで後宮こうきゅうに入れ
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葬祭の儀は、漢の文帝のごとくせよ、と云える、天下の臣民は哭臨こくりん三日にして服をき、嫁娶かしゅを妨ぐるなかれ、と云える、何ぞ倹素けんそにして仁恕じんじょなる。文帝の如くせよとは、金玉きんぎょくを用いる勿れとなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
金玉きんぎょくもただならざる貴重の身にして自らこれをけがし、一点の汚穢おわいは終身の弱点となり、もはや諸々もろもろの私徳に注意するの穎敏えいびんを失い、あたかも精神の痲痺まひを催してまた私権をまもるの気力もなく
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)