邂逅でっくわ)” の例文
小林城三となって後、金千両を水戸様へ献上して葵の時服を拝領してからの或時、この御紋服を着て馬上で町内へ乗込むと偶然町名主に邂逅でっくわした。
野良のらの仕事を終わって帰る百姓は、いつも白地の単衣ひとえを着て頭の髪を長くした成願寺の教員さんが手帳を持ちながらぶらぶら歩いて行くのに邂逅でっくわして挨拶をした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ホロ酔い機嫌で茶屋を出ると、ぱったり源太夫と邂逅でっくわした。待ち伏せをしていたらしい。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
磯谷の伯父のところに奉公していたという年増としまの女に、お銀は近ごろ思いがけなく途中で邂逅でっくわしてから、手の利くその女のところへ、時々仕立て物を頼みなどしていることは、笹村も見て知っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
官吏らしい鰌髭どじょうひげの紳士が庇髪ひさしがみの若い細君をれて、神楽坂かぐらざかに散歩に出懸けるのにも幾組か邂逅でっくわした。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
それから程経ほどたって野枝さんと二人で銀座をブラブラしている処へ偶然邂逅でっくわし、十五分ばかり立話しをした事があったが、それ以来最近の数年間はただ新聞で噂を聞くだけであった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「今日彼奴あいつらと邂逅でっくわしたよ。源公げんこうの奴と親方にね」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この間も蓋平がいへいで第六師団の大尉になっていばっている奴に邂逅でっくわした。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)