過失かしつ)” の例文
なぜというに、わたしがこんなにたびたび不幸な目に会うのは、みんな自分の過失かしつから来ると思って、反省はんせいするようになったからである。
むろん加平がこのおそろしい過失かしつをやあ公につげるものと正九郎は観念かんねんしていた。ところが予想はまちがっていたのである。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
もしたいした地震ぢしんでないといふ見込みこみがついたならば、こゝろ自然しぜんやすらかなはずであるから過失かしつおこりようもない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
過失かしつとでも何とでも、弁解の道はあろうものを、ただ裁判所恐ろしさ、牢獄恐ろしさ、逃げ隠れをしたばっかりに、絞首台よりもっとむごたらしい、焦熱地獄へ落込んでしまった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、いちばんこまったことには、なにか自分じぶん不注意ふちゅういで、失敗しっぱいをしたものが、しろかげたからといって、ほんとうは、もしないのに、すべての過失かしつしろかげしてしまったことでありました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
隅田川の災難も、過失かしつだと思っているのだ。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほどときどきはわたしがいやなほど、ひどく乱暴らんぼうに耳をることもあったけれど、わたしに過失かしつがあれば、それもしかたがなかった。
ゼルビノはつみおかしたが、またかれの過失かしつのためにわたしたちはこんなひどい目に会わされることになったのであるが、かれをふりてることはできなかった。
「そうです。そういうはずはないのですが、人はおうおう不幸ふこうにして過失かしつにおちいりやすいのです」