遊山船ゆさんぶね)” の例文
……一体いつたいが、天上界てんじやうかい遊山船ゆさんぶねなぞらへて、丹精たんせいめました細工さいくにござるで、御斉眉おかしづきなかから天人てんにんのやうな上﨟じやうらう御一方おひとかた、とのぞんだげな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白鳥号にた大きな遊山船ゆさんぶねが、この道を通ったが、左のほうへ曲がって、セーヌ川をずんずん上って行った、というのであった。
日和ひよりは上々、向島の土手の上は人間で盛りこぼれそうで、川面かわも遊山船ゆさんぶねでいっぱい、小僧の一人や二人が向島へ駈け出したところで、花見船を見付けることなどは思いも寄りません。
遊山船ゆさんぶねにでも乗ったような顔をしている。罪は弟を殺したのだそうだが、よしやその弟が悪いやつで、それをどんなゆきがかりになって殺したにせよ、人のじょうとしていい心持ちはせぬはずである。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その時は折悪おりあしく、釣船も遊山船ゆさんぶねも出払って、船頭たちも、漁、地曳じびきで急がしいから、と石屋の親方が浜へ出て、小船を一そう借りてくれて、岸を漕いでおいでなさい、山から風が吹けば
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折から花は眞つ盛り、日和は上々、向島の土手の上は人間で盛りこぼれ相で、川面かはも遊山船ゆさんぶねで一杯、小僧の一人や二人が向島へ駈け出したところで、花見船を見付けることなどは思ひも寄りません。
「放つて置くが宜い、武家の遊山船ゆさんぶねだ。——町方の岡つ引が口を出す場所ぢやねえ。第一後がうるさいよ。それよりはどての上から一生懸命、船の樣子を見て居る、若い武家の人相を覺えて置くが宜い」