軽子かるこ)” の例文
樹を切るのは樵夫きこりを頼んだ。山から海岸まで出すのは、お里が軽子かるこで背負った。山出しを頼むと一に五銭ずつ取られるからである。
窃む女 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
一ツは面倒な材木きしな委細くわしい当りを調べたのやら、人足軽子かるこそのほかさまざまの入目を幾晩かかかってようやく調べあげた積り書
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
吉次郎はいつもの通りに、養父と一緒に日本橋へ買ひ出しに行つて、幾笊かのうなぎを買つて、河岸の軽子かるこに荷はして帰つた。
魚妖 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「お店には、手代だの若い者だの、それから船がつくと、水夫かこ軽子かるこがたくさんに出入りするから、生意気なことをいうと、らしめられますよ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸太はその男をつかまえていた、「たしかだとも」と、軽子かるこらしいその男はいきごんだ調子で云った
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
軽子かるこ片荷かたに程の土を其の板の上に載せますと、それを左に持ちまして、右の手で仕事をすると申します。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
江戸でも以前物を背負う労役者を軽子かること呼んでいたことは、牛込の軽子坂などの例が示している。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
吉次郎はいつもの通りに、養父と一緒に日本橋へ買出しに行って、幾笊かのうなぎを買って、河岸かし軽子かるこに荷わして帰った。
魚妖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
仕事先が二ツになるというので、竹、六、勘、由、亀親方の五人は両国から別の方にわかれ、丑、三公、左次郎の三人だけは、何時もの砂利場へ軽子かるこに来た。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにかといえば拳骨で鼻をこするが、その容子ようすは正に軽子かるこ駕舁かごかき人足といった風だ、けれえなる者にもこれが遺憾だったらしく、「おそめ」から帰る途中の暗がりで、こっぴどく叱られた。
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
おなじ店の若い者や、河岸かしの荷あげの軽子かるこなども四、五人打ちまじって、何か賑やかにしゃべっていた。喜平もその群れにはいって、ゆうべの失敗しくじりばなしをはじめた。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はしけ伝馬船てんません払底ふっていを告げて、廻船問屋は血眼ちまなこで船頭をひっぱり合っているし、人夫や軽子かるこの労銀は三割方も暴騰あがったというが、それでも手をあけている労働者は見あたらなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日本橋の魚河岸で軽子かるこでもしているらしい、そのあたりで酔いつぶれているのをよく見かける。長屋の者はそう云っていた。——初めに大鋸町をたずねたが、作次の女房はなにも云わなかった。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あてなどはございません。河岸かしへ行って軽子かるこをしようと、鉄砲笊てっぽうざるをかついで紙屑買いをやろうと、無二無三にやって行けば、働いているうちに思案はひとりでにつくと思っているだけで」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほかには一種の軽子かるこ、いわゆる立ちン坊も四、五人ぐらいは常に集まっていた。下町から麹町四谷方面の山の手へ上るには、ここらから道路が爪先あがりになる。ことに眼の前には三宅坂がある。
御堀端三題 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのほかには一種の軽子かるこ、いわゆる立ちン坊も四、五人ぐらいは常に集まっていた。下町から麹町四谷方面の山の手へ登るには、ここらから道路が爪先あがりになる。殊に眼の前には三宅坂がある。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
河岸で荷揚の軽子かるこをさしずしていた店の者たちが
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)