躍如やくじょ)” の例文
舞踊組曲「胡桃割くるみわり人形(作品七一ノA)」には、チャイコフスキーの童心と人の好きが躍如やくじょとしている。美しく可愛らしい曲だ。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
あたかも日本画が僅少きんしょうの線をもって描きて自然物を躍如やくじょたらしむるが如く、数語を以て各動物を読者の前におどらせるのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
彼はついに一つのプランを思いついた。頭脳はにわかに冷静となった。科学者だった彼の真面目しんめんもく躍如やくじょとしてよみがえった。消去法とは一体どんな数学であるか。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
忠利の「松風まつかぜ」の出来栄えを賞歎した手翰しゅかんであるが、師弟和楽の状が、紙面に躍如やくじょと溢れている。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これらの歌多くは事に逢ふて率爾そつじに作りし者なるべく文字の排列はいれつなどには注意せざりしがために歌としては善きも悪きもあれどとにかく天真爛漫てんしんらんまんなる処に元義の人物性情は躍如やくじょとしてあらはれ居るを
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
私たちはその作を通して、作者の躍如やくじょたる個性を尊ぶことはできる。だがこれは工藝品としての美を讃えているのではない。人間としての面白味であって、ただちに作そのものの価値とは云えない。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
とある辺りの情景は、まさにそのときの情景を描いて躍如やくじょたるものがある。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これでこの男の面目は躍如やくじょと見えた。眼に信長もない笑い方である。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)