跪坐きざ)” の例文
ましてや行きずりにせよ龍顔に咫尺しせきしたわけでは尚更なくつて、はるか閤門こうもんの際に跪坐きざして、そつともち上げてみた目蓋のはしに
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
写真を掲げた一図は高野山に蔵せられる「聖衆来迎図しょうじゅらいごうず」のほんの一部分、中央阿弥陀あみだ如来の向って右に跪坐きざする観世音菩薩かんぜおんぼさつの像である。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
阿Qは壁にむかって跪坐きざし、これも神威に打たれていたが、この時両手をついて無性ぶしょうらしく腰を上げ、いささかあわを食ったようなていでドギマギしながら、帯の間に煙管を挿し込み
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
われわれ人間は、はかり知るべからざる混沌こんとんのうちに渾然たる大調和の存する大自然の前に、破壊の威力と建設の威力とを併せ有する大自然の前に、心をむなしくして跪坐きざしなければならぬ。
『グリム童話集』序 (新字新仮名) / 金田鬼一(著)
独断的信条のうちに化石しもしくは利得のために堕落したる人種は、文化の嚮導者きょうどうしゃとしては不適当である。偶像もしくは金銭の前に跪坐きざすることは、歩行の筋肉と前進の意志とを萎縮いしゅくさせる。
お糸さんは祠の前へ跪坐きざして叮嚀ていねいに礼拝した。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)