越前守えちぜんのかみ)” の例文
……神田川をへだてて、むかいは松平越前守えちぜんのかみ上屋敷かみやしき。……西どなりは、鞘町さやまち、東どなりは道路をへだてて石町こくちょう……。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
四十七歳の越前守えちぜんのかみ大岡忠相おおおかただすけは、あらたに目安箱を置き、新田しんでん取り立ての高札を立てなどして、江戸南町奉行としてめざましい活躍をしたときだった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
遊廓は浅草田圃たんぼへ移され、新吉原となり、芝居だけ元の土地に残っていたが、ずっとくだって天保てんぽう十三年に、勤倹令をいた幕府の老中、水野越前守えちぜんのかみ
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
つまり昔の堅人とか、水野越前守えちぜんのかみ式の人にはそういうところがある。しかし何といっても、化け物は無いという方の人物にはしっかりしたところのある事は争われない。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
江戸の十八大通じゅうはちだいつうの話だとか、天保年度の水野越前守えちぜんのかみの改革だとか、浅草の猿若町さるわかちょうの芝居の話だとか、昔の浅草観音の繁昌はんじょうだとか、両国の広小路に出た奇抜な見世物の話だとか
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と、口早にいって、越前守えちぜんのかみは、松平伊豆守信祝いずのかみのぶとき(信綱の曾孫そうそん)の前へ坐った。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)