詮議立せんぎだ)” の例文
これは鑑賞的には全くいわゆる「うがち過ぎ」た無用の詮議立せんぎだてに相違ないのであるが、心理学的には見のがすことのできない問題である。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
どっちが先や詮議立せんぎだてしたとこで無駄ですねんけど、一ぺん間違いあってからは、私に済まん思いながら同じあやまち繰り返してたらしいのんで
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
出たという様なことではないでしょうか。いずれにしても、あの連中の詮議立せんぎだてはもう必要がありませんね。今度の犯罪にはちっとも関係がない筈ですから
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「その無数のものを、いちいち捕えて詮議立せんぎだていたしていたら、詮議に暮れて、大御所の跡目をうけて二代将軍たるの御事業は遂になすいとまもございませぬぞ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなに思うことないわよ。だれが閑ちゃんの詮議立せんぎだてなんぞするものですか。だれも知りゃしないもの。それにさ、わたしは実のところ、閑ちゃんに手伝ってもらおうと欲を
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
しかし普通の小説家のようにその勝手な真似の根本をぐって、心理作用に立ち入ったり、人事葛藤じんじかっとう詮議立せんぎだてをしては俗になる。動いても構わない。画中の人間が動くと見ればつかえない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そう云う詮議立せんぎだては此の小説の埒外らちがいであるから、今は孰方どちらでもよいとしておこう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、またぞろ、松尾要人かなめの門を叩き、そこでさんざん毒づいたり詮議立せんぎだてした結果が、却って、がっかりしたものを負わされて、今——この二条河原のつつみまで戻りかけて来たところであった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こっちの詮議立せんぎだてばかりしておって、一体、今日は何しに参ったのだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それこそ弘法様がへそで茶をわかすだろう。なんでてめえや法達が悪事の足を洗っているものか。……だがお互い様のこった、そんな詮議立せんぎだてはやめとして、時に、てめえ今夜はどこへ行ったんだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはまた彼の詮議立せんぎだてのうえにも、むごい興味をそそッていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)