見損みそく)” の例文
自分は「馬鹿にするねえ、この明盲目あきめくらめ。人を見損みそくなやがって」と云いたかった。しかし口だけは叮嚀ていねいに、一言ひとこと
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山「急ぐって急がねえって、あゝ悪い時に連れて来たな、あんまり日並がすぎたから怪しいとは思ったが、何うも天気を見損みそくなった、仕方がねえ、気を大丈夫に持って呉れ、師匠颶風はやてだよ」
人間を見損みそくなったのは、自分でなくて、かえってお延なのだという断定が、時機を待って外部に揺曳ようえいするために、彼の心に下層にいつも沈澱ちんでんしているらしかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
卑劣と知って、人の手先にはならんでも、われに対する好意から、見損みそくなった母の意をけて、御互に面白からぬ結果を、必然の期程きてい以前に、家庭のなかにける事がないとも限らん。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それほどのかんがえがちゃんとあるあなたに、あんなつまらない仕事を御頼おたのみ申したのはわたしが悪かった。人物を見損みそくなったのも同然なんだから。が、市蔵があなたを紹介する時に、そう云いましたよ。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)