見得けんとく)” の例文
きらずだ、つなぐ、見得けんとくがいいぞ、吉左右きっそう! とか言って、腹がいているんですから、五つ紋も、仙台ひらも、手づかみの、がつがつぐい。……
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
逃げるようにとび出して、うしろ手に格子をぴしゃり——ほっとすると同時に、急にしっかりした見得けんとくが文次の胸を衝いた。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けれども自分は「奥義書ウパニシャット」を読んだ。読み、且、思索を重ねた。自分は生来の鈍根で見得けんとくするところ甚だ浅薄な男であるが、それでもだうやらぼんの本義をやや会得することが出来たやうである。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
見得けんとくの立った証拠ににわかに天下御免の伝法風になった御用聞き三次、ちょっと細工をするんだからとばかり何にも言わずに、番頭を通して奥から碁石を一つ借り受けた。
釘抜藤吉、無理にも最初はな見得けんとくを守り立てて、乾児を励ましてここまで来た木槌山。
「そのことよ。俺にも見得けんとくが立たねえ。犯人ほしは?」