蝶番ちょうつが)” の例文
ギイと蝶番ちょうつがいの鳴る音がして、後ろのつづらのふたがひとりでに口を開いたかと思うと、その中から肩を起こした紫紺しこん頭巾の人影。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平面の処や角々は翁自身の工夫でどうにか出来たが、蝶番ちょうつがいの処がわからないので習いに来たのであったという。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「思った通りだ。蝶番ちょうつがい細工、崖の色合いによくにせて、ちゃんと水門が出来ていやがる」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
左右の腿を取りましたらば今度は親指と人差指とて鳥の手即ち羽の骨を引出すようにして肩の骨の蝶番ちょうつがいを截り放します。こういう風に引出す心持こころもちにしていると蝶番いが直ぐ離れます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
蝶番ちょうつがいのびかけた網扉を押し階段を降りると、おびただしい朝露である。ふり仰ぐと密林の枝さしかわこずえのあわいに空はほのぼのと明けかかり、あかつきの星が一つ二つ白っぽく光を失い始めていた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
かつ、朱をそそいで太くふくらませた武松ののど首から、ぱんと首カセの蝶番ちょうつがいがね、喉輪のどわの邪魔物は、二ツになって飛んでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真っ暗な、奥の一間へ入って、床脇とこわきの壁をギーと押した。壁に蝶番ちょうつがいがついていてくのである。と、床下へ向って深く、石の段がおちこんでいる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地獄で仏のよろこばしさをそのままに、ここで幾月かの間、張りつめていた神経がいっぺんにゆるんで、ひざぽね蝶番ちょうつがいがクタクタになるかと思われると、お綱も遠見とおみに気がついて
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)