しべ)” の例文
朝霧淡くひとつひとつに露もちて、薄紫にしべ青く、純白まっしろの、蘂赤く、あわれに咲重なる木槿の花をば、継母はかゆに交ぜて食するなり。こは長寿ながいきする薬ぞとよ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丁度良い塩梅あんばいのは仕上げになって居りませんが、これは高麗青皮こうらいせいひと申しまして余り沢山ないもので、高麗国の亀の皮だと申しますが、珍しいもので、しべが立って此の様に性質の良いのは少ないもので
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
向日葵のしべの座黒う熟れにけり秋の日向もうらなつかしも
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
牡丹しべ深くわけ出る蜂の名残かな 芭蕉
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
厚い花辨の中に無數のしべをちぢらせた
樹木とその葉:11 夏の寂寥 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
しべしたしみふかき花よ——少女
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
しべは、ひめもす薫習くんじふ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
形は貝母ばいもに似て、暗緑帯紫の色、一つは咲いて花弁はなびらが六つ、黄粉こうふんを包んだしべが六つ、つぼみが一つ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牡丹しべ深くわけいづはち名残なごりかな 芭蕉
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
聖經せいきやうしべにひもどく花のかひ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
しべは、ひねもす薫習くんじふ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
これは、その簪のたちばなしべに抱きました、真珠の威勢かにも申しますな。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)