薩張さつぱ)” の例文
『まだ。今日か明日歸るさうだ。吉野さんがゐないと俺は薩張さつぱり詰らないから、今日は莫迦に暑いけれども飛出して來たんだ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「自慢ぢやねえが、薩張さつぱりわからねえ。——どうかしたら、箒だの鎌だのくはだのつて、お百姓の道具調べぢやありませんか」
世間が無理やりにバカにして了つたのか薩張さつぱり判らない、學校の成績は中位であつて復習といふものをしたことがなく、只、教室で一應耳にいれるだけなのだ
めたん子伝 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
あの畫工ゑかき、頭は白髮だらけだすが、年はまだ小池はんと同い年だすてな。……同い年でも畫が下手で、名前だけ小池はんの弟子にしてもろても、薩張さつぱりあきまへんのやな。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
話をして見たくもあり、もう綺麗薩張さつぱり忘れて了ひたくもあつた。
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
「その方も薩張さつぱりあかんよ。」
「親分、あつしには薩張さつぱり解らない。銀次は骨董こつとうを打ち壞して井筒屋の父子を殺したんですか」
十二になります、柄ばつかりで薩張さつぱりあきまへん。……死んだ母親は醫者にしたがつてましたが、本人は軍人になるいうてますよつて、軍人にしようおもてます。……親の跡を
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
上に掛けた、もう一枚の筵を剥ぐと、二十六七の、柄の小さい小綺麗な男、髮形も小意氣で、肌につくものの薩張さつぱりして居るのは、身扮みなりはどうであらうと、女出入りの盛大な人間の一特色です。