葛根湯かっこんとう)” の例文
お秀は客の帰るちょっと前、少しばかりの隙を見付けて、お万に葛根湯かっこんとうせんじさせて、四畳半へ持って来させて飲ませたそうです。
この薬たしかに効能あるやうに覚えければその後は風邪心地かざごこちの折とてもアンチフェブリンよりは葛根湯かっこんとう妙振出みょうふりだしなぞあがなひて煎じる事となしぬ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「そんなら、一ついいことを教えてやろう。日本には昔から葛根湯かっこんとうといって、風邪にすぐ効く素晴らしい薬があるが」
葛根湯 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「おい、松。御苦労だが、品川へ引っ返して、その生薬屋で金造が何を買ったか調べて来てくれ。風薬かざぐすり葛根湯かっこんとうぐらいならいいが、きず薬でも買やあしねえか」
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
本当の診察なら、私は不可いけない。まるで脈を一つ採ったことの無い、自分の風邪をひいたのには葛根湯かっこんとうを飲んで、それで治る医者なんだ。こっちも謎のようなことを
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが宗伯老が亡くなられてその養子の代になったら、かごがたちまち人力車に変じた。だから養子が死んでそのまた養子が跡をいだら葛根湯かっこんとうがアンチピリンに化けるかも知れない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お勢は葛根湯かっこんとうを飲まなかったらしいよ、吐月峰の中は薬で一杯だ」
「呆れて物が言えねえ。俺の小言を葛根湯かっこんとうと間違えてやがる」