菓子鉢かしばち)” の例文
テーブルの上には、この塾堂にしてはめずらしい、豪華ごうかな洋なまなどをった菓子鉢かしばちがおいてあったが、それも朝倉先生が一つつまんだきりだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
この小説では前歯の欠けた跡に空也餅くうやもちが引っかかっていたことになっているが、そのころ先生のお宅の菓子鉢かしばちの中にしばしばこの餅が収まっていたものらしい。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
東海道筋にあるこの神奈川の宿は、古いといえば古い家で、煙草盆たばこぼんは古風な手さげのついたのを出し、大きな菓子鉢かしばちには扇子形せんすがた箸入はしいれを添えて出すような宿だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
土産にと言って民助のくれた椰子やしの実の菓子鉢かしばちなどを見るにつけても熱い地方のことを子供心に聞きたがるという風で、食後まで伯父さんの側を離れようとはしなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)