苗裔びょうえい)” の例文
「お恥かしい次第ですが、祖先は漢家のながれをくみ、劉氏の苗裔びょうえいで、自分は劉安りゅうあんと申すものでございます」と、答えた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この篠塚稲荷しのづかいなり……むかし新田の家臣篠塚伊賀守、当社を信仰し、晩年法体ほったいしてこの辺に住まっていたもので、別当国蔵院はその苗裔びょうえいであるといわれる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは不思議な術であったから、私は今にそれを覚えているが、後に聞くと白蓮教びゃくれんきょうの者はこの術をするということであったが、ついすると彼の男は、その苗裔びょうえいかも解らない。
偸桃 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
しかし古人を景仰けいこうするものは、その苗裔びょうえいがどうなったかということを問わずにはいられない。そこでわたくしは既に抽斎の生涯をしるおわったが、なお筆を投ずるに忍びない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここに最もいぶかしい事はチベットにマホメット教があることで、その信者はシナ人と往古カシミールから移住した者の苗裔びょうえいとであります。ラサ、シカチェを集めておよそ三百人もございましょう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
とし両番りょうばんを経て相謁あいえっしてわず、空しくかえっては惆悵ちゅうちょう怏々おうおうとして云うべからざるものあり。切におもう、備や漢室の苗裔びょうえいに生れかたじけなくも皇叔に居、みだりに典郡の階に当り、職将軍の列にかかわる。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに劉表は漢室の宗親そうしんでもあるから、同じ漢の苗裔びょうえいたる自分とは遠縁の間がらでもあるが……たえて音信を交わしたこともないのに、急に、この敗戦の身と一族をひき連れて行ってどうであろうか?
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)