自棄糞やけくそ)” の例文
アヽ解つた、お前此頃松公まつこうにげを打たれたと云ふから、其で其樣そんなに自棄糞やけくそになつてるんだね。道理で目の色が變だと思つた。オヽ物騷々々!
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
私は押入れを明けて氷のような蒲団ふとんの中へ自棄糞やけくそにもぐりこんで軒下の野良犬のらいぬのように丸く曲ってそのまま困睡した。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
ところで、丘を越えた葡萄畑のほうから自棄糞やけくそになって出鱈目な歌を唱っているベルナアルさんの声が春風に乗ってはっきりときこえて来るのだった。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それから、彼はポケットへ両手を突き込んで各国人の自棄糞やけくそな馬鹿騒ぎを、祭りを見るように見に行くのだ。——
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
わたしは少し自棄糞やけくそに子を抱きあげて窓外の風に向け、その小さい頭を出してやつた。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
喬介の質問に、キッと顔をげて矢島は、自棄糞やけくそに高い声で喋り出した。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
これはまた、うどんをねているようなおどりの隙から、楽手たちの自棄糞やけくそなトランペットが振り廻されて光っていた。すると突然、山口は踊りの中の一人の典雅な支那婦人を見付けて囁いた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)