胡麻竹ごまだけ)” の例文
おれは火の玉の兄きがところへ遊びに行たとお吉帰らば云うておけ、と草履ぞうりつっかけ出合いがしら、胡麻竹ごまだけつえとぼとぼと焼痕やけこげのある提灯ちょうちん片手
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
長い袖を三寸余もえんいた。これは頭より高い胡麻竹ごまだけつえを突いて来た。杖の先には光を帯びた鳥のをふさふさと着けて、照る日に輝かした。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男持ちとしてはわりかた骨細にできた京風の扇の形をながめ、胡麻竹ごまだけの骨の上にあしらってある紙の色の薄紫と灰色の調和をも好ましそうにながめて
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
実際そのおびただしい木賊はNさんの言葉に従えば、「胡麻竹ごまだけを打ったれ縁さえ突き上げるように」茂っていた。
春の夜 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
打込んだ門の柱には□□ぐうとした表札まだそのままに新しく節板ふしいたの合せ目に胡麻竹ごまだけ打ち並べた潜門くぐりもんの戸は妾宅しょうたくの常とていつものように外から内の見えぬようにぴったり閉められてあった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼はその中に、支那から帰った友達にもらった北魏ほくぎ二十品にじっぴんという石摺いしずりのうちにある一つをり出して入れた。それからその額をかんの着いた細長い胡麻竹ごまだけの下へら下げて、床の間のくぎへ懸けた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)