背負しょっ)” の例文
「京都という所は、いやに寒い所だな」と宗近むねちか君は貸浴衣かしゆかたの上に銘仙めいせんの丹前を重ねて、床柱とこばしらの松の木を背負しょって、傲然ごうぜん箕坐あぐらをかいたまま、外をのぞきながら、甲野こうのさんに話しかけた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
背負しょっちゃ駄目よ。——それよりか、ちょいと水族館でも覗いて見ないこと?』
四月馬鹿 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
当然あたりめえの事だ、娘ッ子わしア田舎者ですが、此の火事に焼け出され、彼方此方あっちこっち迯𢌞にげまわって、包を背負しょったまゝ泊る所もねえので、此処らをうろ/\して居る所だが、貴女あんたの死のうとするのを見掛け
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこで、この男の旅姿を見た時から、ちゃんと心づもりをしたそうで、深切しんせつな宰八じじいは、夜のものと一所に、机を背負しょって来てくれたけれども、それは使わないで、床の間の隅に、ほこりは据えず差置いた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)