繻子張しゅすばり)” の例文
「そうさ。たった二つだ。そら、こことここに」と圭さんは繻子張しゅすばり蝙蝠傘こうもりの先で、かぶさるすすきの下に、かすかに残る馬の足跡を見せる。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と取ったが、繻子張しゅすばりのふくれたの。ぐいと胴中どうなかを一つ結えて、白のこはぜで留めたのは、古寺で貸す時雨の傘より、当時はこれが化けそうである。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御菩提所ごぼだいしょへ、お墓まいりにおいでなさるのに、当世のがないもんですから、私の繻子張しゅすばりのをお持たせ申して、化けそうだといって、床屋の職人にお笑われなすった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
片側波を打った亜鉛塀トタンべいに、ボヘミヤ人の数珠のごとく、烏瓜を引掛ひっかけた、くだん繻子張しゅすばりもたせながら、畳んで懐中ふところに入れていた、その羽織を引出して、今着直した処なのである。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つ腰をして、つえがわりの繻子張しゅすばり蝙蝠傘こうもりがさの柄に、何の禁厭まじないやら烏瓜からすうり真赤まっかな実、あい萌黄もえぎとも五つばかり、つるながらぶらりと提げて、コツンといて、面長で、人柄な、あごの細いのが
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)