繭買まゆかい)” の例文
其内、稲次郎は此辺で所謂即座師そくざし繭買まゆかいをして失敗し、田舎の失敗者が皆する様に東京に流れて往って、王子おうじで首をくくって死んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
秤を腰に差して麻袋をしょったような人達は、諏訪すわ、松本あたりからこの町へ入込んで来る。旅舎やどやは一時繭買まゆかいの群で満たされる。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すると、さっきから、森の薄暗がりに、黙然と腕をみあわせて、こっちをながめていた繭買まゆかいの銀六老人が、のそ、のそ、と歩いて来ながら
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
繭買まゆかい商人と見える男が、一軒の茶店へずいと入る、主人の老爺は茶をみながら
無頼は討たず (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
どこも達磨だるまをおくようになったと云う旅籠屋などに、働きに入ろうかとさえ思ってみることもあったが、それらのお客がみんな近在の百姓や、繭買まゆかいなどの小商人こあきゅうどであることを想ってみるだけでも
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
時も時とて飯料はんりょうの麦をきらしたので、水車に持て行って一晩ひとばんずの番をしていて来ねばならぬ。最早甲州の繭買まゆかいが甲州街道に入り込んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
祭りを見せるといって、馬喰町ばくろちょう旅籠はたごから、お信を連れて、出あるいていた繭買まゆかいの銀六老人は、お信には、分らぬ、知れぬ、とばかりいっていた丈八郎の行動を、どうして、そう心得ているのか
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、腰を上げると、繭買まゆかいの銀六老人が
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)