絆纒はんてん)” の例文
「昨夜のお供ですよ。提灯は手拭で鉢卷をさせて紋所を隱してあつたし、供の者の絆纒はんてんは皆んな裏返しに着て居たさうで」
汚れた絆纒はんてんに、色の褪せた紺腿引をはき、シベリヤの農夫のように、脚にグルグルと襤褸ぼろをまきつけている。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
折しも湯島台から、近道を、上野山内さんないへと急ぐ人と見えて、大なし絆纒はんてん奴姿やっこすがたしもべを供につれた若衆わかしゅひとりと、そで擦り合わんばかりに行き違ったのであります。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
一度もうとこへ入つたらしく、長襦袢ながじゆばんの上に絆纒はんてんを引つかけて、だらしはないけれど、いかにも仇つぽい姿です。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
佐吉は絆纒はんてんをぬぎすてると、逆落さかおとしに川の中へ躍りこみ、ほどなく佐倉屋をかかえて上って来て、艫から差しだしている手へ佐倉屋の襟をつかませたが、フト
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
プーンと言つた鋸引のこぎりびきでもするやうな、あぶが障子の間へ入つたやうな、——私も聽きましたとも。すると主人は飛起きて、絆纒はんてんを引つ掛けて、手燭てしよくと鍵を持つて、廊下傳ひに土藏の方へ行きました。
提灯のもんとか、お供の絆纒はんてんとか、何にか目印があるだらう
「黒の絆纒はんてんに紺の股引もゝひきで、頬冠りも黒かつたやうで」